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自分の株式比率を数えたのは、この夏でした。52歳、資産は約4,900万円。そのうち株式が約3,400万円で、比率にして69%。
数えたあとで、もうひとつ気づいたことがあります。
債券が、ゼロでした。
正確に言うと、「検討した結果ゼロにした」のではありません。一度も検討していなかったのです。9年間、積立を続けてきて、買ったのは株式だけでした。
この記事は、その穴を埋めるために調べたことの記録です。結論から言うと、私が予想していたのとは違う答えが出てきました。
まず、制度のほうに理由がありました
「債券を買うなら、まずNISAだろう」と思って調べ始めて、最初につまずきました。
金融庁が公表しているつみたて投資枠の対象商品は、2026年9月18日時点で371本あります。その内訳がこうなっています。
| 国内 | 内外 | 海外 | |
|---|---|---|---|
| 公募投信 株式型 | 67本 | 36本 | 95本 |
| 公募投信 資産複合型 | 5本 | 154本 | 3本 |
| ETF | 5本 | ― | 6本 |
区分が「株式型」と「資産複合型」の2つしかありません。
「債券型」という枠が、そもそも存在しないのです。
つみたて投資枠で債券に触れる方法は、バランスファンド(資産複合型)の中身として持つしかない。債券だけを買いたければ、成長投資枠・iDeCo・課税口座・個人向け国債のどれかになります。
「新NISAはつみたてで世界株」とよく言われますが、あれは誰かの意見である前に、制度がそう作られているということでもありました。
GPIFは、債券を17兆円買っていた
参考になるのは、やはり公的年金の運用です。
GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の業務概況書によると、2026年3月末時点の運用資産は293.6兆円。2025年度の収益率は**プラス16.47%**でした。
その2025年度に、GPIFが実際に何をしたか。
株式を約15兆円売って、債券を約17兆円買っていました。
同じ年、国内株式はプラス34.62%、国内債券は**マイナス5.11%**です。つまり、いちばん上がったものを売って、いちばん下がったものを買っている。これがリバランスです。
私が驚いたのは、「リバランスをしましょう」と言っているのではなく、実際に15兆円売っていたことでした。
一方の私は、上がった株式をそのまま持ち続けて、下がった債券は1円も持っていませんでした。
現金500万円を移すと、年7万円ちがう
では実際に、いくら違うのか。
私は生活防衛費として500万円を楽天銀行の普通預金に置いています。マネーブリッジ(楽天証券との連携)を設定しているので、金利は**年0.48%**です(2026年9月1日時点、1,000万円までの部分)。
これを個人向け国債に移したらどうなるか。財務省が公表している2026年9月募集分の利率はこうでした。
| 表面利率 | 税引後 | |
|---|---|---|
| 変動10年(第198回) | 1.95% | 1.5538575% |
| 固定3年(第196回) | 1.96% | 1.5618260% |
| 固定5年(第186回) | 2.24% | 1.7849440% |
500万円を1年置いた場合の、税引後の利息で比べます。
| 税引後の利息 | |
|---|---|
| 楽天銀行 普通預金(0.48%) | 19,100円 |
| 個人向け国債 変動10年 | 77,693円 |
| 個人向け国債 固定5年 | 89,247円 |
差は、年70,147円。 5年なら約35万円です。
同じ500万円を、同じだけ「動かさずに置いておく」だけで、これだけ違う。しかも個人向け国債は元本割れがなく、1万円から買えて、最低金利0.05%が保証されています。
正直、これを見た時点では「すぐ移すべきだ」と思いました。
ところが、物価と並べたら景色が変わった
ここで、もうひとつの数字を持ってきます。
財務省が毎日更新している**BEI(ブレーク・イーブン・インフレ率)**というものがあります。物価連動国債の利回りと、同じ残存期間の普通の国債の利回りの差から計算される数字で、市場がこれから先の物価上昇率をどう見ているかを表します。
2026年9月17日時点の数字がこうでした。
| 10年固定利付国債 | 2.925% |
| BEI(10年) | 2.089% |
| 10年物価連動債 | 0.836% |
市場は、これから10年の物価上昇を年2.089%と織り込んでいます。
名目の金利2.925%から物価の2.089%を引いた残りが、実質の利回り0.836%。これが「増えたと言える分」です。
では、さっきの選択肢を、この2.089%と並べてみます。
| 税引後 | 物価との差 | |
|---|---|---|
| 楽天銀行 普通預金 | 0.382% | −1.707ポイント |
| 個人向け国債 変動10年 | 1.554% | −0.535ポイント |
| 個人向け国債 固定5年 | 1.785% | −0.304ポイント |
全部、マイナスでした。
いちばん条件の良い固定5年でも、物価には届かない。
つまりこういうことです。
安全資産は、インフレに勝てない。できるのは、負け幅を1.7ポイントから0.3ポイントに縮めることだけ。
「普通預金から国債へ移せば解決する」という話ではありませんでした。負けの大きさを小さくする、という話だったのです。
個人向け国債の「元本割れなし」は、名目の元本の保証であって、買えるものの量の保証ではない。ここを私は取り違えていました。
(念のため補足すると、BEIは10年の数字なので、5年の固定5年と厳密に同じ土俵ではありません。また、これは市場の予想であって、実際にそうなるとは限りません。)
外国債券は「為替を取るか、年2.5%払うか」
「日本の債券がだめなら外国債券は」と思って、iDeCoで選べる商品を見ました。
私はiDeCoを楽天証券で運用しています。海外債券のインデックスファンドとして入っているのが「たわらノーロード先進国債券」でした。そこで、同じ指数に連動する為替ヘッジありのファンドと、成績を並べてみました。
どちらもFTSE世界国債インデックス(除く日本)に連動する、同じ運用会社のファンドです。違いは為替ヘッジの有無だけです。
| ヘッジなし | ヘッジあり | |
|---|---|---|
| 5年前との比較 | +28.26% | −23.45% |
| 1年前との比較 | +5.45% | −3.07% |
(いずれも2026年9月18日時点)
同じ債券を持っていて、5年で52ポイントの差。
読み方はこうです。債券そのものは、この5年で下がっていました。 世界的に金利が上がったので、債券の価格が落ちたのです。ヘッジなしが増えて見えるのは、その間に円安が進んだから。
つまり「債券で増えた」は、債券の成績ではなく為替の成績でした。
では為替を消せばいいかというと、そのコストがヘッジありの数字に出ています。ヘッジのコストは、おおむね2国間の短期金利の差で決まります。
| 米国の政策金利 | 3.75〜4.00%(2026年9月16日決定) |
| 日本の政策金利 | 1.25%程度(2026年9月引き上げ) |
| 差 | 約2.5〜2.75ポイント |
年2.5%を超えるコストを払って、為替を消す。 債券の利回りがそれを上回らなければ、手元には何も残りません。
私にとっては、これがいちばん重い話でした。**私の外貨建て資産はすでに約2,200万円、総資産の45%**あります。そこに「安全資産として」ヘッジなしの外国債券を足せば、安全になるどころか、為替の比率がさらに上がる。
株式を減らして債券へ、が必ずしも安全側への移動にはならない。そういうことでした。
中途換金は、ちょうど1年分の利息
もうひとつ、実際に動かすうえで大事な点があります。
個人向け国債は、発行から1年経てばいつでも中途換金できます(元本割れはしません)。ただし、直前2回分の各利子(税引前)相当額に0.79685を掛けた額が差し引かれます。
固定5年・2.24%で500万円の場合を計算してみます。
- 1回の利子(税引前)= 500万円 × 2.24% ÷ 2 = 56,000円
- 差し引かれる額 = 56,000円 × 0.79685 × 2回 = 89,247円
ちょうど1年分の税引後利息と同じ額です。つまり「1年分の利息を返して解約する」形になります。
私が置いている500万円は生活防衛費で、急に必要になりうるお金です。だとすると問いは「全部を国債にするか」ではなく、**「そのうちいくらなら、5年動かさないと決められるか」**になります。
そしてもうひとつ。発行後1年間は、原則として中途換金できません。
それで、どうするのか
まだ決めていません。
ただ、調べる前と後で、問いの形が変わりました。
調べる前は「債券を買うべきか」でした。いまは、こうなっています。
- 500万円のうち、いくらなら5年動かさないと決められるか
- 外国債券を足すと、外貨比率は何%になるのか
- iDeCoの株式100%は、受け取りまで8年のいま、そのままでいいのか
どれも「買うか買わないか」ではなく、比率と期間の問いです。
前回、資産配分を点検したときに「年に1回、全体の比率を見る」と決めました。今回わかったのは、そのときに見るべきものがもう一つあった、ということです。
株式か、現金か。円か、外貨か。そして、動かせるお金か、動かせないお金か。
私は9年間、「何を買うか」ばかり考えてきました。そのあいだ、債券という選択肢があることすら、視界に入れていませんでした。
買わないという結論になっても構わないと思っています。ただ、見ていなかったから持っていなかった、というのだけは、もう繰り返したくありません。
まとめ
- つみたて投資枠に「債券型」という区分はない(371本が株式型と資産複合型のみ/2026年9月18日時点)
- GPIFは2025年度に株式を約15兆円売り、債券を約17兆円買っていた
- 個人向け国債は固定5年で2.24%。500万円なら普通預金との差は年7万円
- ただしBEI(市場が織り込む物価上昇率)は2.089%。安全資産はどれも実質でマイナス
- 外国債券はヘッジなしなら為替、ヘッジありなら年2.5%超のコスト
- 中途換金の差し引きは、ちょうど1年分の利息
安全資産を持つ理由は「増やすため」ではなく、「減り方を決めておくため」なのだと思います。
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本記事は筆者個人の記録であり、特定の金融商品を推奨するものではありません。金利・利回り・基準価額は本文に記載した時点のもので、その後変動します。個人向け国債の利率は毎月の募集ごとに変わります。投資判断はご自身の責任でお願いします。
参照した一次資料:金融庁「つみたて投資枠対象商品の概要について」(2026年9月18日)/財務省「現在募集中の個人向け国債」(令和8年9月9日現在)・「物価連動国債」「ブレーク・イーブン・インフレ率の推移」(2026年9月17日現在)/日本銀行「金融市場調節方針の変更」(2026年9月)/FRB「FOMC Implementation Note」(2026年9月16日)/GPIF「業務概況書」(2026年3月末時点)/アセットマネジメントOne 各ファンド情報(2026年9月18日基準)/楽天銀行「金利一覧」(2026年9月1日時点)