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お金記事 No.175

奨学金にも「金利ある世界」が来た|借りる金利は上限3%に、もらえる支援は毎年変わる

📌 この記事でわかること

日本学生支援機構の第二種奨学金は、2026年7月に貸与が終わった人から固定金利が上限の3.000%に達しました。一方、返さなくてよい支援(修学支援新制度)は多子世帯に広がり、仕組みは年々複雑に。仕事柄、奨学金の手続きに関わる52歳が、公式の数字で「いま何が変わっているか」と、進学前の家庭が見落としやすい3つの点を整理します。

10月12日の日本経済新聞に、「『金利ある世界』の奨学金」という記事が載っていました。立場の違う3人の識者が、奨学金のこれからを論じたものです。

記事の前書きには、奨学金の「借金」としての性格がこれまで以上に浮き彫りになっている、という趣旨のことが書かれていました。

私は仕事柄、奨学金の手続きに関わることがあります。この記事を読んで、ここ数年、現場で感じていたことと重なりました。

借りる奨学金は、金利が上がっている。 返さなくてよい支援は、広がっている。でも、仕組みがどんどん複雑になっている。

この記事では、日本学生支援機構(JASSO)と文部科学省の公式の数字で「いま何が変わっているのか」を確かめます。そのうえで、進学前のご家庭が見落としやすい点を3つ、整理します。


奨学金には「借りる」と「もらう」の2種類がある

はじめに、全体の地図です。日本学生支援機構の奨学金は、大きく2つに分かれます。

種類 中身 返す?
貸与奨学金(第一種) 利子のない奨学金 返す
貸与奨学金(第二種) 利子のある奨学金 返す(利子つき)
給付奨学金+授業料等減免 高等教育の修学支援新制度 返さなくてよい

今回の「金利」の話は第二種、「支援の広がりと複雑さ」の話は修学支援新制度のことです。


変化① 借りる奨学金の金利は、上限の3%に届いた

第二種奨学金の金利は、借り始めたときではなく、借り終わった月(卒業する月など)に決まります。借りるときに「固定」か「見直し(おおむね5年ごとに変わる)」かを選び、金利の上限はどちらも年3%です。在学中は利子がかかりません。

JASSOが公表している「貸与利率の推移」から、3月に借り終わった人(=春に卒業した人)の固定金利を並べてみます。

借り終わった月 固定金利(基本月額)
2022年3月 0.369%
2023年3月 0.905%
2024年3月 0.940%
2025年3月 1.641%
2026年3月 2.423%
2026年7月〜9月 3.000%(上限)

4年で、およそ6.5倍です。そして2026年7月に借り終わった人からは、上限の3.000%に張りついています。

ちなみに、毎月の基本の額に上乗せして借りる「増額部分」は、さらに0.2%ほど高く、2026年9月は3.322%でした。

240万円を借りると、利子はいくら変わるか

月5万円を4年間(合計240万円)借りて、仮に20年で返す場合を、元利均等で計算してみました(概算です)。

借り終わったときの固定金利 毎月の返済 20年間の利子の合計
0.369%(2022年3月) 約10,400円 約9万円
2.423%(2026年3月) 約12,600円 約63万円
3.000%(上限) 約13,300円 約79万円

同じ240万円でも、利子は約9万円から約79万円へ。差は70万円です。

月々の差は3,000円ほどなので、見過ごしやすい数字です。でも20年分を足すと、ここまで差が開きます。

※実際の返済の回数や金額は、借りた総額などで決まります。正確な額はJASSOの「返還シミュレーション」で確かめてください。

固定と見直し、どちらがよいかは「分からない」

2026年9月に借り終わった人の金利は、固定が3.000%、見直しが2.400%でした。いまは見直しの方が低く見えます。

ただ、見直しは5年ごとに金利が変わります。この先、金利がさらに上がれば、見直しの方が高くなることもあります(見直しにも上限3%があります)。

どちらが得かは、これからの金利しだいで、誰にも分かりません。 私が言えるのは、「金利は借り終わる月に決まる」「選んだ方式は、借り終わる年度の一定の時期まで変更できる」という仕組みを知ったうえで選んでほしい、ということだけです。

債券の記事でも書きましたが、日本はもう「金利のない国」ではなくなりました。奨学金も、その流れの中にあります。

→ 50代の債券の考え方|「安全資産はどれも物価に負ける」と分かった


変化② 返さなくてよい支援は、広がった

一方で、返さなくてよい支援(高等教育の修学支援新制度)は、この2年で大きく広がりました。

  • 2024年度から:多子世帯や理工農系の学生について、世帯年収600万円程度(目安)の中間層まで対象が広がりました(第4区分)。
  • 2025年度から:扶養する子どもが3人以上の「多子世帯」は、所得の制限なく、国が定める額まで授業料と入学金が減額・免除されるようになりました。

多子世帯の授業料等の減免の上限は、たとえば次のとおりです(年額・JASSOの公表値)。

学校の種類 入学金 授業料
私立大学 26万円 70万円
私立短大 25万円 62万円
私立専門学校 16万円 59万円

所得の制限がないので、これまで「うちは対象外」と思っていたご家庭でも、子どもが3人以上いれば対象になる可能性があります。

さらに2026年度から、「子ども」の数え方が変わった

ここからが、少し複雑な話です。

多子世帯かどうかは、「扶養されている子どもが3人以上いるか」で決まります。ところが、大学生などのきょうだいがアルバイトで一定以上かせぐと、税金の上では扶養から外れてしまい、「子ども」に数えられなくなることがありました。

2025年度の税制改正で、19歳から22歳の学生世代を対象に、新しい控除(特定親族特別控除)ができました。これを受けて、修学支援新制度でも、2026年度の住民税を使う判定から、年収123万円を超えて160万円以下の学生世代のきょうだいを、「子ども」として数えられるようになりました。

ただし、本人以外のきょうだいを数えるには、別に申告が必要です。申告しなければ、多子世帯と判定されない可能性があります。JASSOは2026年9月に、多子世帯の判定結果についてのお知らせを出し、該当しそうな人に学校へすぐ相談するよう呼びかけています。

正直に言うと、この説明を一度読んで理解できる人は、多くないと思います。


進学前のご家庭が見落としやすい3つのこと

ここからは、仕事で奨学金の手続きに関わる中で感じていることです。進学前の保護者の方に、なかなか伝わっていないと感じる点が3つあります。

1. 修学支援新制度は「2つの支援」でできている

修学支援新制度は、「給付奨学金(毎月振り込まれる、返さなくてよいお金)」と「授業料等の減免(学校に払う授業料・入学金が減る)」の2つがセットになった制度です。

支援 どこから 何が変わる
給付奨学金 JASSOから本人の口座へ毎月 生活費や教材費に使えるお金が入る
授業料等の減免 学校が授業料・入学金を減らす 学校に払う額が減る

ここが「奨学金」という1つの言葉でまとめて語られるため、混乱しやすいところです。

たとえば私立の大学や専門学校に自宅から通う場合、もっとも支援が手厚い第1区分なら、給付奨学金は月38,300円です(自宅外なら月75,800円)。これとは別に、授業料と入学金が年額の上限まで減額されます。

2つを分けて説明すると、「そういうことだったのか」と納得してくださる方が多いです。

2. 支援の区分は、毎年10月に見直される

入学時に決まった支援の区分は、卒業までずっと同じとは限りません。

JASSOは在学中、毎年、本人と保護者(生計維持者)の家計を確かめ直し(適格認定)、10月から翌年9月までの1年間の支援区分を決め直します。

家計の状況によっては、区分が上がることも、下がることも、支援の対象から外れることもあります。

3. 見直しに使うのは「少し前の年収」

3つ目がいちばん分かりにくい点です。

毎年の見直しに使われるのは、判定するときに確認できる最新の住民税の情報です。住民税は、前の年の1月から12月の所得をもとに、その年の6月ごろに決まります。

つまり、こういう時間差があります。

いつの所得 → いつの住民税 → いつの支援区分
2025年1〜12月 → 2026年度(6月ごろ確定) → 2026年10月〜2027年9月

2027年9月分の支援は、2年近く前の2025年の所得で決まっていることになります。

このため、「今年は収入が下がったのに、区分が変わらない」「去年は残業が多かったから、いまになって区分が下がった」ということが起こります。JASSOも、直近の状況が変わっても判定結果には反映されない、と説明しています。

急に収入が減った場合は「家計急変」という別の申請の仕組みがありますので、学校の窓口に相談してください。


もう一つ、50代の家庭が知っておきたいこと:資産の基準

マネコンの読者の方に、特にお伝えしたい点があります。

修学支援新制度には、収入だけでなく資産の基準があります。本人と保護者の資産の合計が5,000万円未満であることが条件です。

そして、この資産にはNISAで投資している分も、時価で含まれます。預貯金、株式、投資信託、国債なども対象です(土地や建物は含みません)。

多子世帯の場合は、資産が5,000万円以上3億円未満でも授業料等の減免は受けられますが、給付奨学金は支給されません。

50代で、子どもの進学と資産形成が重なっているご家庭は、「資産の基準」があることを頭に置いておくだけでも、慌てずにすみます。

→ NISAの始め方|51歳の初心者が実際にやった3ステップ


親ができる3つのこと

最後に、制度が複雑なときに、親ができることを3つ挙げます。

  1. 「進学資金シミュレーター」で、まず目安を知る JASSOのサイトにあり、年収などを入れると、支援の対象になりそうかを確かめられます。

  2. 高校3年生の春〜夏の「予約採用」の時期を逃さない 修学支援新制度は、高校在学中に申し込む「予約採用」と、進学後に申し込む「在学採用」があります。案内は高校から届きます。

  3. わからないことは、進学先の学校の窓口に聞く 多子世帯のきょうだいの申告のように、自分から言わないと反映されないことがあります。「うちは対象になりますか」「きょうだいの申告は必要ですか」と、遠慮なく聞いてください。


まとめ:「とりあえず借りる」から「読んで選ぶ」へ

  • 借りる奨学金(第二種)の固定金利は、2026年7月に借り終わった人から上限の3.000%。240万円を20年で返すと、利子は約79万円(概算)。4年前は約9万円でした。
  • 返さなくてよい支援(修学支援新制度)は広がった。多子世帯は所得制限なしで授業料等が減免され、2026年度からはきょうだいの数え方も変わった。
  • ただし、支援は2つの仕組みでできていて、区分は毎年10月に見直され、使われるのは2年近く前の所得。資産の基準にはNISAも含まれる。

奨学金は、かつて「とりあえず借りておくもの」と言われることもありました。金利ある世界では、仕組みと金利を読んだうえで選ぶものに変わったと感じています。

この記事が、進学を控えたご家庭の「まず何を確かめればいいか」の手がかりになればうれしいです。


出典

  • 日本学生支援機構「貸与利率の推移」(令和3〜8年度の貸与利率一覧)
  • 日本学生支援機構「第二種奨学金の利子と利率の算定方法」
  • 日本学生支援機構「給付奨学金の支給額」「進学後(在学採用)の給付奨学金の家計基準」
  • 日本学生支援機構「令和7年度からの多子世帯支援拡充に係る対応について」
  • 日本学生支援機構「2026年度適格認定(家計)における多子世帯判定結果について」(2026年9月4日)
  • 日本学生支援機構「在学中の適格認定(家計)」
  • 日本経済新聞 2026年10月12日「複眼『金利ある世界』の奨学金」

※この記事の内容は2026年10月時点のものです。制度や金利は変わることがあります。最新の情報は、日本学生支援機構と進学先の学校でご確認ください。

この記事を書いた人

マネーコンパス(52歳・会社員)

43歳・貯金ゼロから資産形成を始め、9年で資産4,900万円・不労所得は月6.6万円に。 新NISA・配当株・固定費削減を、すべて自分の実体験にもとづいて発信しています。

詳しいプロフィールと資産の内訳を見る →

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